製作ストーリー

「冷え取り瓦・長久」ができるまで

 瓦との出会い

鍼灸師になる前は「経絡」を整えるストレッチヨガの教室を運営していました。

 

「健康になることを目的にしたストレッチヨガ教室」に来て下さる生徒さんは、どこかしらの不調を抱えています。

 

そういう方の身体は例外なく冷えていて、多少運動したぐらいでは解消しないレベルまで冷え切っている方がほとんどでした。

 

運動して汗をかけば冷えは解消しそうではあるのですが、内臓まで冷え切っていると、運動により多少筋肉を温めた程度では冷えの解消には至らないのです。

 

お風呂に長く入れば冷えがとれると思っている方もいますが、それも違うようです。

 

 

人間の身体は温かいところにより多くの血液が集まるようになります。

 

お風呂に入ると皮膚表面が温まるので、内臓の血液が体表に移動してしまうため、温まった血液が内臓に届きづらくなり、内臓の冷え解消にはつながりにくいとも言われています。

 

お風呂に長くつかることが内臓の血流を悪化させて、むしろ冷えを促してしまうとも考えられるのです。

 

ちなみに、運動をした後などの疲労回復には、体表と一緒に筋肉まで温まるお風呂は最適です。

 

しかし、普通に生活をしている分にはそこまでの筋肉疲労は起こしません。

(なお、運動の直後は筋肉にたまった乳酸の排出に血液が必要なため、より体表に血液が集まる入浴は避けた方がいいとされています。) 

 

内臓が冷えている生徒さんを何とかできないかと考えているときに思いついたのが、瓦を使った温熱法でした。

 

瓦を温めてお腹に載せるという方法は民間療法として聞いたことがあり、調べてみると遠赤外線を出す瓦もあることが分かりました。

 

遠赤外線は身体の冷え解消にはとても役立つものです。

 

これを使って何とかできないかと、瓦を扱っている業者さんを何軒も訪ね歩くようになりました。

 

瓦の業者さんに「お腹を温める目的で使う瓦を探している」と言うと、ほぼ門前払いされます。

 

「瓦は屋根」というのが常識の世界では、健康器具として転用するという意味すら伝わらないことも多く、無駄足の繰り返しに落ち込むこともありましたが、ひとつの業者さんが真剣に話を聞いて下さり、屋根瓦をカットしてお腹に載せられる大きさにして、それを面取り加工するなどして怪我のないようにするところまで引き受けてくれたのです。

 

すでに流通している屋根瓦を加工したものなので、欠点はたくさんあったのですが、ひとまず「遠赤外線でお腹を温めて内臓の冷えをとる」という目的は果たすことができました。

 

 オリジナルの瓦を作りたい!

このカット屋根瓦を使ってみたところ、かなりの方に効果がありました。

 

ですが、やはり元は単なる屋根瓦。

使っていくうちに大きく分けて4つの欠点があることが分かったのです。

 

 

1つ目の欠点は、「電子レンジでうまく温められない」ということでした。

 

普通の屋根瓦は焼いて作る物なので直火には強いのですが、電子レンジで温めることは想定しておらず、レンジで温めても均一に温まらなかったり、温めすぎると割れて危険であることがわかりました。

 

カット屋根瓦の温め方は、ガスコンロの五徳の上に置いて、直火にかけて温めます。

 

ですが、「中火で5分」とお伝えしていても、うっかり火にかけすぎてしまうことが続出したのです。

 

火にかけすぎると瓦の温度が上がりすぎてしまいます。

 

そのことで瓦にひびが入り割れてしまったり、包んだタオルが高熱で焦げて変色することもありました。

 

タオルが変色するほどの高熱になると、お布団の中で湯たんぽのように使っていると、布団まで焦げてしまうことまで起こり、かなり危険です。

 

オール電化の家に住む方も増えており、そもそもコンロがないという話を聞くと、どのような年齢の方にも毎日手軽に続けられ、安心してお使いいただける電子レンジに対応した瓦の必要性を感じるようになりました。

 

 

2つ目の欠点は、瓦を直火にかけることで、瓦の中に含まれている空気中の水分が失われてしまうということでした。

 

直火で焼いたカット屋根瓦を身体にあてると、土の水分が抜けた状態のため、「乾燥した熱」が肌に伝わることになります。

 

これでは肌が乾燥してカサカサになり、かゆみが出やすくなるばかりか、低温やけどどのリスクも上がってしまいます。

 

 

3つ目の欠点が、瓦の重さです

 

屋根瓦はやはり重く、お腹に載せていると苦しく感じることがあります。

 

瓦の材料となる粘土の密度が高いため、重いのは仕方がないのですが、やはりもう少し軽いものでないと不快で長続きしません。

 

また密度が高いことで、空気中の水分を素材である土が吸える量も少なく、それが2つ目の欠点である「乾燥した熱」にもつながっていました。

 

 

4つ目の欠点は、瓦の形です

 

ット屋根瓦のカーブが身体にフィットしていないことで、身体にあてていても、落ちたりずれやすくなっていました。

 

厚みも均一でないため、火の入り方が瓦の場所ごとに変わる(より厚さが薄いところが熱くなる)ことも、安全性の面から気になるところでした。

 

さらに、屋根瓦の裏面にはスリット(線)が入っています。このスリットは屋根瓦を設置する際のガイドラインになるものなのでしょうが、コンロの熱がここに集中すると割れてしまうのです。

 

実際に使用する時は「長久」をタオルで包みます

 試作を重ねる

 制作会社を探す

 

オリジナルの瓦を作るにあたり、一番問題になったのは、製作を引き受けてくれる会社を探すことでした。

 

名もない一個人が会社に電話して、このような商品を作りたいとお願いしても、そもそも話すら聞いてもらえません。市販の瓦を加工していただく時に散々苦労したので覚悟はしていたのですが、今回は加工ではなく、一から作るということで、厳しさはそれ以上でした。

 

当時の私は単なるストレッチのインストラクターで、社会的な信用があるわけでもありません。

 

そんな一個人と大きな契約をしてくれるところなど、普通はないのです。

 

困り果てていたところ、その頃知り合いになった会社の社長さんが、見かねて協力をして下さることになり、対応してくれそうな瓦製作会社を見つけてくださいました。

 

実は阪神淡路大震災以降、瓦の生産量は落ちています。

 

これは完全に風評被害なのですが「瓦が重いから家が崩れた」とワイドショーなどが誤った情報を流したため、屋根に重みのある瓦を使わない住宅が増えてしまったのです。

 

後に、この報道を扇動した某大学教授は、これは間違いであったと訂正をして謝罪したのですが、一度世に出てしまっ

たイメージを覆すことができずにいるのが現状です。

 

今回、「身体を温めるための瓦」という、本来の目的の違う商品を作って下さったのは、このままでは生産量が落ち続けてしまう瓦の良さを知ってほしいという思いからだと後からお聞きして、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。

 原料の土にこだわる

 

一番の難関であった製作会社が決まり、そこから今度は材料の選定に入りました。

 

瓦の素材は「土」です。どこの地方の土が一番身体を温めてくれるのか、まずはその調査を始めました。この時に役に立ってくれたのが「フィンガーテスト」(通称FT)です。

 

これは「オーリングテスト」を応用したもので、私が鍼灸治療をするときにも使っている手法です。(下コラム参照)

 

 

「オーリングテスト」は基本的に複数人で行いますが、これを一人でできるようにしたものがFTです。

 

まず日本の焼き物で有名な地域の土を集め、どの素材が身体を温めるのかをFTで検証しました。

 

実際に素材を加熱し、加熱直後から徐々に冷めていく過程を調べ、ど地域の土が温熱療法として使用するときに適しているのかという実験を繰り返すと、ある地域の土が優れていることが分かったのです。

 

成型した「長久」を乾燥させています

季節や気温によって瓦の水分量をコントロールしてから焼き始めます。

ここを失敗するとヒビが入ってしまうので、職人さんの技術が必要なところです。

 土に微生物を配合

 

次に、決まったその土に、微生物(乳酸菌など善玉菌の数々)を様々な配合で混ぜてみました。

 

焼く前の段階ですら、「普通の土」と「微生物のたっぷり含まれた土」を触ってみると、微生物の入った土の方が柔らかく温度を感じます。

 

FTでみても、土の良さがまったく違うのです。素材の良さは完成品に大きな影響を与えます。

 

瓦は高温で焼くため、その過程で微生物は死んでしまいますが、混ぜた物の方が明らかに身体をよく温めてくれました。

 

とはいえ多ければいいというものではないので、最適な配合を割り出すために「長久」の製作会社さんと試行錯誤を重ねました。

 

時間はかかりましたが、こうして一からオリジナルの土を作り、ようやく素材が完成しました。

 

鹿のなめし皮で磨いています

大きさや形を整えた後は、鹿のなめし皮を使って1枚ずつ磨いていきます。身体に当った時にケガの無いよう細心の注意を払っています。

 最適な形状を探る

 

次に「長久」の形状です。

 

今まで使っていた市販品を加工したもので不満に思っていたところを全て解消する形にするため、身体の各部分にフィットするカーブ、厚み、重さ、縦横の比率などを割り出し、設計していきました。

 

 熟練を要する焼成

 

こうして完成した素材と設計で「長久」を焼いていただいています。

 

生地を乾かす段階で、含まれていた水分量を15%以上減らすのですが、この時に大きさも6%ほど縮みます。

 

水分量の調整に失敗すると焼いたときに割れてしまうため、その日の天候や湿度、温度を考えながら調整するのは難しく、熟練の技術を要するところです。

 

しかも今回は通常とは違い、「微生物を混ぜた素材」で焼くという初めての試みとのことで、試行錯誤の上、「長久」の製作会社さんには大変なご苦労をおかけしました。

 

 完成した「冷え取り瓦・長久」

オリジナルの瓦がほしいと思い始めて から10年以上かかりましたが、こうしてようやく完成にたどり着きました。

 

手に取っていただくと分かりますが、「長久」は表面がくすんだように見えます。

 

これは、「いぶし瓦」という技法で作 られているからです。

 

いぶし瓦の技術は千年以上前からあるもので、瓦が焼けた後に窯の温度をて、ゆっくりと燻していきます。

 

燻すことで「長久」の表面には「カーボンナノファイバー」(カーボンフィルム)といわれる炭素膜が形成され、通常の瓦よりも遠赤外線効果が高くなるのです。

 

このカーボンは最先端の科学技術に応用できることが大学の研究などで明らかになっており、特に「電磁波の吸収・遮断効果」は注目されています。

 

例えばパソコン使用時の電磁波が身体に及ぼす影響を、「長久」をお腹にのせておくことで減らす効果が期待できるのです。

その他にも、「長久」は多孔質のセラミックでできているため、蓄熱に優れています。一度温めると冷めにくいため、何度も温める手間が省けるという点で非常に好評です。

 

また、多孔質であるおかげで「長久」は常に空気中の水分を吸っており「呼吸」している状態です。

レンジで温めると、吸っていた空気中の水分と共に熱を出しますので、巻いたタオルが湿気るぐらいになります。

 

この湿気た熱が肌の乾燥を防ぎ、かゆみなども防止します。肌の水分量は、いわゆる一般の「温熱器具」(電気アンカなど)により温められると乾燥して減ってしまうため、その部分がかゆくなったり湿疹ができるということはよく起こりますが、「長久」はその欠点をカバーできるものになっています。

 

レンジから取り出す時は、「長久」がとても熱いので、必ずタオルで包んで直接触らないようにしてください。

 

使ってみてわからないことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

 

「長久」を使っていると、身体はだんだん「冷えにくい体質」に向かいます。日々の生活に取り入れ、身体を温める気持ちよさをぜひ体験してください。

 

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